【問176】ビジネス実務法務検定2級 練習問題|競業避止義務と利益相反取引
株式会社の組織と運営 問16/20難易度B(標準)
問題文
取締役会設置会社であるI株式会社の取締役Jが、取締役会の承認を受けないまま、自己のためにI社の事業の部類に属する取引を行った。この場合について、最も適切なものはどれか。
- 1.承認を受けずにされた競業取引は無効であり、取引の相手方はJに対して履行を求めることができない。
- 2.承認を得ない競業取引がされた場合であっても、会社は自ら損害の額を立証しなければ損害賠償を請求することができない。
- 3.Jまたは第三者が当該取引によって得た利益の額は、I社に生じた損害の額と推定される。
- 4.取締役会設置会社では、競業取引について取締役会の承認を受けていれば、取引後に取締役会へ報告する必要はない。
解説
正解は3。取締役が競業取引の承認を受けずに取引をした場合、当該取引によって取締役または第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定される(会社法423条2項)。会社が失った取引機会による損害額の立証は困難であることから、立証責任を軽減して取締役の責任追及を実効的にする趣旨である。
1は誤り。競業取引の規制は会社と取締役の内部関係の規律であり、承認を欠いても取引の相手方との関係で取引自体が無効となるわけではない。取引の安全を害さないためである。これに対し利益相反取引のうち直接取引は、会社が相手方に無効を主張しうる場合がある点と対比しておきたい。2は誤り。前記の推定規定により会社は損害額の立証を要しない。4は誤り。取締役会設置会社では、競業取引または利益相反取引をした取締役は、取引後遅滞なくその取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない(会社法365条2項)。
2級では、競業取引と利益相反取引の規制対象の違い、承認機関、違反の効果の違いに加え、自己のためにした直接取引をした取締役の責任が無過失責任であり一部免除も認められないという点まで押さえたい。