【問8】ビジネス実務法務検定2級 練習問題|危険負担と反対給付の履行拒絶
企業取引・契約の法務 問8/20難易度B(標準)
問題文
A社はB社に対し、特定の中古機械1台を代金後払いで売却したが、引渡し前に、両当事者のいずれの責めにも帰することができない火災によりこの機械が焼失した。この危険負担をめぐる次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.特定物の売買であるから危険は契約の成立時にB社へ移転しており、B社は代金全額を支払わなければならない。
- 2.A社に帰責事由がない以上、B社は契約を解除することができず、代金債務のみが当然に消滅する。
- 3.危険は引渡しによって移転するため、B社は代金の支払を拒めるが、契約の解除権は生じない。
- 4.B社は代金の支払を拒むことができ、契約を終了させるには履行不能を理由に解除する必要がある。
解説
正解は4。当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる(民法536条1項)。もっともこれは履行拒絶権を認めるにとどまり、代金債務そのものが消滅するわけではないから、契約関係を終了させるには解除の意思表示が必要となる。債務の全部の履行が不能であるときは、催告をすることなく直ちに解除することができる(民法542条1項1号)。1は誤り。改正前に特定物の売買について債権者主義を定めていた規定は削除され、引渡し前の目的物の滅失の危険を買主が負担することはなくなった。2は誤り。改正後の解除は債務者に対する制裁ではなく債権者を契約の拘束力から解放する制度であるため、債務者の帰責事由は要件とされない。したがってA社に帰責事由がなくてもB社は解除できる。3は誤り。危険が目的物の引渡しによって移転する点(民法567条1項)は正しいが、履行不能を理由とする解除権は発生する。なお、履行不能が債権者の責めに帰すべき事由によるときは、債権者は反対給付の履行を拒めず、解除もできない(民法536条2項・543条)。