【問368】貸金業務取扱主任者 練習問題|不法行為と相殺の制限
民法・民事訴訟法 問62/114難易度C(難しい)
問題文
不法行為に基づく損害賠償債権と相殺に関する次の記述のうち、その内容が適切なものを1つ選びなさい。
- 1.AがBに対して過失による不法行為に基づく損害賠償債務を負っている場合、Aは BにAに対する貸金債権があるとき、当該損害賠償債務を受働債権として相殺することができる。
- 2.AがBに悪意で暴行を加えて傷害を負わせた場合、BはAに対する損害賠償債権を自働債権として、AのBに対する貸金債権を受働債権として相殺することができる。
- 3.AがBに対して悪意の不法行為に基づく損害賠償債務を負っている場合、AはBに対する貸金債権を自働債権として当該損害賠償債務を受働債権として相殺することができる。
- 4.AがBに過失により交通事故で身体傷害を負わせた場合、AはBに対する貸金債権を自働債権として、当該損害賠償債務を受働債権として相殺することができる。
解説
正解
正解は選択肢2です。被害者Bからの相殺は禁止されていません。
各選択肢の解説
選択肢1「過失の不法行為で損害賠償を受働債権として相殺可能」→ ❌(不適切)
問題文の状況を整理すると、Aが加害者で過失の不法行為です。Aが相殺する場合、自働債権はBのAに対する貸金債権、受働債権はAの損害賠償債務です。この場合、Aが自分の損害賠償債務を受働債権として相殺するのですが、受働債権が損害賠償債務の場合、生命・身体侵害かどうかが問題となります。ただし本肢では「BにAに対する貸金債権がある」とし、Aが損害賠償債務を受働債権として相殺するとしていますが、これは自働債権がBの貸金債権であり構成に問題があります。正確には、相殺禁止が問題となる場面ではありません。本肢は記述が紛らわしいですが不適切です。
選択肢2「被害者Bが損害賠償債権を自働債権として相殺可能」→ ✅(適切)
民法第509条の相殺禁止は、不法行為の加害者が損害賠償債務を受働債権として相殺することを禁じるものです。被害者Bが損害賠償債権を自働債権として相殺することは禁止されていません。被害者保護の趣旨から、被害者側からの相殺は認められます。
選択肢3「悪意の不法行為で加害者Aが相殺」→ ❌(不適切)
民法第509条第1号により、悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務を負担する者は、相殺をもって債権者に対抗することができません。加害者Aは損害賠償債務を受働債権として相殺できません。
選択肢4「身体傷害の損害賠償で加害者Aが相殺」→ ❌(不適切)
民法第509条第2号により、人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務を負担する者は、相殺をもって債権者に対抗できません。過失であっても身体侵害である以上、加害者Aからの相殺は禁止されます。
背景知識
| 不法行為の種類 | 加害者からの相殺 | 被害者からの相殺 |
|---|---|---|
| 悪意の不法行為 | 禁止(509条1号) | 可能 |
| 生命・身体侵害 | 禁止(509条2号) | 可能 |
| その他の過失不法行為 | 可能 | 可能 |
学習アドバイス
相殺禁止は「加害者」を保護しない趣旨です。被害者からの相殺は常に可能である点を押さえましょう。
まとめ
- 悪意の不法行為と生命・身体侵害は加害者からの相殺が禁止
- 被害者側からの相殺は常に認められる
- 過失による財産損害のみの不法行為は加害者からも相殺可能