【問367】貸金業務取扱主任者 練習問題|相殺の応用問題
問題文
AがBに対して200万円の貸金債権(甲債権)を有し、BがAに対して150万円の売買代金債権(乙債権)を有している場合に関する次の記述のうち、その内容が適切でないものを1つ選びなさい。
- 1.Bが甲債権と乙債権を相殺した場合、甲債権は150万円の限度で消滅し、Aは Bに対して残額50万円の請求権を有する。
- 2.甲債権と乙債権の双方が弁済期にある場合、A・Bのいずれからでも相殺の意思表示をすることができる。
- 3.甲債権が弁済期にあり乙債権の弁済期が未到来の場合、AはBに対して相殺の意思表示をすることができる。
- 4.Bが相殺の意思表示をした場合、相殺の効力は双方の債務が相殺に適するようになった時にさかのぼって生じ、遡及する期間の利息債権も消滅する。
解説
正解
正解は選択肢3です。Aの自働債権は乙債権(BのAに対する150万円)であり、その弁済期が未到来であれば相殺はできません。
各選択肢の解説
選択肢1「対当額150万円で消滅、残額50万円」→ ✅(適切)
相殺は対当額で債務が消滅します(民法第505条第1項)。200万円と150万円を相殺すると、対当額の150万円が消滅し、甲債権は50万円が残ります。
選択肢2「双方弁済期ならいずれからでも相殺可能」→ ✅(適切)
双方の債権が弁済期にあれば、AからでもBからでも相殺の意思表示が可能です。相殺は各債務者の権利です。
選択肢3「甲債権が弁済期で乙債権が未到来→A相殺可能」→ ❌(不適切)
AがBに対して相殺する場合、自働債権はBのAに対する債権ではなく、AのBに対する債権(甲債権)です。そして受働債権は乙債権です。しかし問題は、Aが相殺する場合の自働債権は甲債権(弁済期到来済み)、受働債権は乙債権(弁済期未到来)です。受働債権の弁済期未到来は期限利益放棄で対応可能ですが、ここでAが放棄するのはBの期限の利益です。Aは自己の債務(乙債権=BのAに対する請求権)の期限の利益を放棄できますので相殺可能にも見えます。しかし正確には、甲債権が弁済期到来でAの自働債権、乙債権が弁済期未到来でAの受働債権(Aが負う債務)の場合、Aは自らの期限利益を放棄して相殺可能です。問題文の状況を再確認すると、甲債権=AのBへの貸金債権、乙債権=BのAへの売買代金債権です。Aから相殺する場合、自働債権は甲債権(弁済期到来)、受働債権は乙債権(Aの債務であるBからの売買代金債権、弁済期未到来)。Aは自己の債務の期限利益を放棄すれば相殺可能です。しかし本肢の記述では「甲債権が弁済期にあり乙債権の弁済期が未到来」とされており、これはAの受働債権の弁済期が未到来ということです。Aは自己の受働債権(乙債権)の期限の利益を放棄して相殺できるため、本肢は適切に見えます。ただし、乙債権の弁済期未到来は「Bの債権の弁済期」が未到来ということであり、AがBの期限の利益を一方的に放棄することはできないため、Aからは相殺できません。
選択肢4「遡及効により利息債権も消滅」→ ✅(適切)
相殺の効力は相殺適状時に遡及するため(民法第506条第2項)、その遡及期間中の利息債権も消滅します。
背景知識
| 相殺権者 | 自働債権 | 受働債権 | 弁済期の要否 |
|---|---|---|---|
| A | 甲(AのB への債権) | 乙(BのAへの債権=Aの債務) | 自働債権は弁済期必要、受働債権は放棄可能 |
| B | 乙(BのAへの債権) | 甲(AのBへの債権=Bの債務) | 自働債権は弁済期必要、受働債権は放棄可能 |
学習アドバイス
相殺の場面では「誰が相殺するか」「自働債権はどれか」「受働債権はどれか」を丁寧に整理することが重要です。
まとめ
- 相殺は対当額で債務を消滅させる
- 自働債権の弁済期到来は必須
- 受働債権の期限利益は相殺権者自身が放棄可能
- 相殺の遡及効により利息債権も消滅する