【問50】ビジネス実務法務検定3級 練習問題|手付の倍返しと現実の提供
民法(債権・契約) 問10/36難易度C(難しい)
問題文
売主が手付の倍額を償還して契約を解除する場合(民法557条1項)の方法として、最も適切なものはどれか。
- 1.売主は買主に対し、手付倍額を支払う旨を口頭で通知すれば足りる
- 2.売主は買主に対し、手付倍額の現実の提供をしなければならない
- 3.売主は買主に対し、手付の同額を提供すれば足り、倍額の必要はない
- 4.売主は買主に対し、いつでも履行の着手後でも手付倍額を提供すれば解除できる
解説
正解
正解は選択肢2です。
各選択肢の解説
選択肢1 → ❌誤り
判例(最判平6・3・22)は、売主が手付による解除をするためには、解除の意思表示に加えて手付倍額の現実の提供が必要であるとしており、口頭の提供では足りません。
選択肢2 → ✅正解
民法557条1項は売主は「その倍額を現実に提供して」契約を解除できると規定しており、現実の提供が要件です。
選択肢3 → ❌誤り
売主は手付の倍額を提供する必要があり、同額では足りません(受領済みの手付分と合わせて倍額になるため)。
選択肢4 → ❌誤り
民法557条1項本文は「相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」と規定しており、買主が履行に着手した後は売主は解除できません。
背景知識
手付倍返しによる解除は売主から見た解約権の行使方法で、買主の手付放棄解除(手付流し)に対応します。改正民法は「現実に提供して」と明文化し、判例の立場を立法的に確認しました。現実の提供とは、債権者が直ちに受領できる状態に置くことで、口頭の提供(493条ただし書)では足りません。「相手方が履行に着手するまで」という時的制限があり、買主が代金支払の準備等の着手をした後は、売主は手付による解除ができなくなります。
学習アドバイス
手付倍返しは「現実の提供」「履行の着手」のキーワードを正確に覚えましょう。判例(最判平6・3・22)により実務上は供託や持参が必要となる点にも注意してください。
まとめ
- 売主の手付解除には倍額の現実の提供が必要(557条1項)
- 口頭の提供では足りない(判例)
- 相手方の履行の着手後は解除できない