【問8】ビジネス実務法務検定3級 練習問題|権利濫用の禁止
法体系・取引の基礎 問8/40難易度B(標準)
問題文
権利濫用の禁止に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1.権利濫用とされた場合でも、権利者は原則として権利行使が認められる。
- 2.権利行使が形式的に正当でも、相手の損害等から権利濫用となりうる。
- 3.権利濫用に該当するか否かは、権利者の主観的悪意のみで判断される。
- 4.権利濫用が認められた場合でも損害賠償義務は一切生じない。
解説
正解
正解は選択肢2です。
各選択肢の解説
選択肢1 → ❌
民法1条3項により権利の濫用は許されません。権利濫用と認定されれば、権利行使は否定され、その効果は生じません。
選択肢2 → ✅
権利濫用の判断は形式的権利の有無だけでなく、行使態様、目的、結果のバランスから実質的に判断されます。「宇奈月温泉事件」(大判昭和10年)が典型例で、判例も諸事情を総合考慮します。
選択肢3 → ❌
権利濫用は主観的事情(害意)のみでなく、客観的事情(権利者の利益の少なさ・相手方の損害の大きさ)も総合判断されます。
選択肢4 → ❌
権利濫用に該当する不当な権利行使により他人に損害を与えた場合、不法行為(民法709条)として損害賠償責任を負う可能性があります。
背景知識
権利濫用の禁止(民法1条3項)は信義則とともに私権行使の限界を画する原則です。代表判例として「宇奈月温泉事件」(大判昭和10年10月5日)があり、わずか数坪の土地所有権を盾に高額な買取りを要求した行為が権利濫用とされました。判断基準としては、(1)権利行使の主観的要素(加害目的の有無)、(2)客観的要素(権利者の利益と相手方の損害のバランス)、(3)社会的妥当性などが総合的に考慮されます。実務では、賃貸借契約の解除権行使、土地境界紛争、債権回収などで権利濫用が問題となります。形式的に正当な権利でも、その行使が社会通念上許容されない場合は否定されることを理解しておく必要があります。
学習アドバイス
民法1条3項の条文と「宇奈月温泉事件」を結びつけて覚えましょう。判断要素として主観的・客観的両面から総合判断される点が頻出ポイントです。
まとめ
- 民法1条3項が権利濫用禁止を規定
- 形式的権利でも実質的に不当なら濫用となる
- 主観・客観の総合判断、損害賠償責任もありうる